転職や社内異動で経理職を目指したいけど、どんな資格から勉強すればいいか迷っていませんか?
実は、結論から言ってしまうと、経理に転職するには日商簿記を取っておけば十分です。
なぜなら、そんなに多くの資格を取っても実際の面接でアピールする機会がないから。
あとは自分が目指すレベルによって、取得する級を選択すればよいのです。
私も過去には「経理 資格 転職」とネットで検索しながら、経理職に有利な資格をネットで調べては、日商簿記・FASS・BATIC・税務能力実務検定等、経理に関する一通りの民間資格を取得してきました。
しかし、実際の転職活動の中では、あえて簿記以外の資格についてはアピールしていません。
面接という限られた時間の中で資格取得の経緯をいちいち説明していたら時間がもったいないですし、それならもっと「実務でどんなことに力を入れてきたか」という点をアピールすべきです。
一方で転職時に無資格でいいかというと、それも考え物です。なぜ転職時に資格が必要かということについては、本文で述べていきます。
この記事では、経理職が転職するために資格を取ることの重要性と、その必須資格ともいえる日商簿記の概要について紹介していきます。
私は新卒で入社後、当初は営業職を担当し、簿記の取得をきっかけに経理職異動。最終的に簿記1級を取得して転職し、今に至ります。
私の経験も踏まえながら日商簿記をどのように転職や社内異動に生かしてきたかという具体例も一緒に書いてあるので、以下のことに興味があればぜひ読んでみてください。
- 自分のレベルでは何級を目指すべきか
- そのためにどうやって勉強したらよいか
- 各級のレベル感を知りたい
- 日商簿記は転職に役立つのか知りたい
何故経理の転職に資格が必要なのか

転職時の経理の資格は、新卒時でいう学歴のようなものであると理解するとわかりやすいです。
少々脱線しますが、イメージしやすいように具体例を挟みます。
学歴が高いからと言って仕事ができるとは限りません。
しかし、皆さんも就活を経験する中で、学歴が選考に及ぼす力が無視できないものであるという実感はあると思います。
なぜ学歴が評価されるのでしょうか。一つとしては、面接という限られた時間内でその人物を客観的に評価する指標を補うためでしょう。学歴が高いということは、目標に向かってそれなりに努力が出来ること、または、相当のポテンシャルを持っていることを意味します。
もう一つの理由としては、採用側の言い逃れです。
東大出身の学生を採用したけれど仕事の方はさっぱりだった場合、周囲の人間としては「あの新人、東大なのに」という感想を持ちます。
一方で無名大学の学生の才能に期待して採用したものの、その能力が期待通りでないとわかった場合はどうでしょうか。
周囲の人間としては採用側の人間に対して「見る目がない」と感じざるを得ません。
新卒時代の場合は、学生が等しく「勉強」という土台に立って、客観的な「学歴」という評価指標の元で評価されるのと等しく、経理の転職の評価指標として、「資格」が存在します。
経理という職種はそのスキルの汎用さゆえに、どこの会社に行ってもある程度は同じレベルのアウトプットを出すことが出来ます。
ですから、その技量を示す客観的な指標があるならば、採用側としてもそれを取り入れるのは自然です。
この記事の冒頭で、転職するには日商簿記だけを取っておけば十分だと話しました。
その理由は、日商簿記以外の資格が、未だ新卒時代における学歴のような「客観的な指標」になり得ていないからです。
一方で、日商簿記はここでいう客観的な指標になり得ています。たとえばあなたの職場の経理部の同僚を想像してみてください。
レベルはあるにしろ、日商簿記を持っていない人はどれほどいるでしょうか。その答えが、日商簿記が客観的指標たる所以です。
繰り返しになりますが、経理職の転職における資格とは、新卒時代の学歴と同じです。
あれば必ず受かるというものでもありませんし、必ずしも無いとだめということでもありません。
ただし、資格があれば必ず武器にはできるものであると理解してください。
日商簿記・全経簿記・全商簿記の違い

一口に「簿記検定」といっても、日商簿記検定・全商簿記検定・全商簿記検定の3種類もあるのをご存じでしょうか。
本題に入る前に、まずこちらの違いから解説していきたいと思います。もう知ってるよって方は読み飛ばして本題に進んでください。
そもそもこの記事で紹介しようと思っていたのは「日商簿記検定」です。
また、おそらく皆さんの周りでこの差を区別されずに「簿記検定」という言葉が使われている場合、その言葉が指すのは「日商簿記検定」のことです。
日商簿記とは、日本商工会議所が主催する検定試験で、その対象は大学生から一般社会人向けとなっております。知名度でいっても他の2つと比べてダントツです。
日商簿記に関する各級ごとのレベル感や受験対象者は、この章以降で個別に書いていくので、いったんここでは詳細を省きます。
全経簿記とは、公益社団法人全国経理教育協会が主催する試験で、こちらの対象も主に大学生から一般社会人とされています。
難易度・知名度的ともに日商簿記検定より低いため、通常であれば、全経簿記を進んで受けるような場合は想定されません。
一方で、全経の最高位資格である「上級」を取得すると、税理士試験の受験資格を得ることが出来るため、それを理由に受けるという人もいます。
日商簿記検定1級でも税理士試験の受験資格を得ることが出来ますが、難易度的でいうと圧倒的に全経上級の方が易しいため、税理士試験受験資格獲得という目的に限っては、全経上級の方がお得です。
全商簿記とは、全国商業高等学校協会が主催する試験で、その対象は主に高校生となっています。
センター試験の科目でも簿記の科目があるのはご存知でしょうか?
全商簿記は商業高校の学生が、大学入試の対策をするために受けたり、大学・短大の推薦入試のための必須条件となっているために取得するような資格です。
日商簿記検定3級

※最近、3級より下に「簿記初級」という資格もできましたが、そちらについては私自身が受けたことがない、かつ未だ一般的に評価されるものでないことから本記事の説明からは省きます
日商簿記検定3級はどんな資格?
日商簿記検定3級は、経理職として持っておきたい最低限の知識を習得することが出来る資格です。
個人商店レベルの経理(青色申告)であれば、簿記3級の知識でまかなえるといわれています。
また、経理職以外の社会人でも、日商簿記検定3級の知識を活かせる場面は多岐にわたります。
さらに社内異動で経理職を希望する場合であれば、日商簿記3級取得をしておけば、人事へのアピールになるのではないでしょうか。
受験費用・受験時期・勉強時間の目安は以下の通りです
- 受験費用:2,800円
- 受験時期:2月、6月、11月の年3回
- 勉強時間:50時間程度
日商簿記検定3級取得に係る費用(独学の場合)
参考書代:1,000円程度
私はこのテキストを使いました。
3級を勉強する際にはそもそも「簿記」という概念がわかりにくく、なかなかとっつきにくい部分がありますが、この参考書では、ストーリー仕立ててわかりやすくまとめてくれているのでお勧めです。
構成としては、前半が各単元の概要まとめ、後半が問題集になっているイメージです。
過去問題集:2,000円程度
過去問題集はできれば参考書と同じシリーズでそろえるのがいいです。
なぜなら、著者・校正者が同じであれば解説のトーンがあっているので、理解の速度が数段早くなるからです。
簿記3級であれば、 一つの参考書をしっかりやり抜けば十分合格レベルの力は身につきます。
日商簿記検定3級取得に係る費用(資格予備校の場合)
大手予備校で30,000円程度
上記の費用の中にはINPUT(基礎講座)とOUTPUT(模試・過去問題)両方が含まれていますが独学と比べて少々高い印象です。
私は日商簿記検定3級をこう活かしました!
私が日商簿記検定3級を取得したのは約4年前。
新卒で入社した会社で配属された営業の仕事がどうも性に合わず、次の異動タイミングで共通系に行きたいと思っていました。
当時は共通系であればなんでも(総務でも法務でも人事でも経理でも)よかったのですが、営業をしている中で、最も関りが深いと感じた経理職を目指すことにしました。
異動希望を出すには実績が必要だということで、簿記3級の受験を決意。無事試験をパスして、社内異動の希望も通り、経理職につくことができました!
「簿記3級なんて一週間で余裕」こんな言葉も聞きますが、実際に行動に移している人は思ったより多くないです。
さほど難しくない資格であっても、社内異動の際には十分なアピール材料になるということが伝えられればと思います。
この記事に詳細を書いていくとあまりに長くなってしまうので、簿記3級に関する詳細は以下の記事にまとめています。

日商簿記検定2級

日商簿記検定2級はどんな資格?
日商簿記検定2級は、 ある程度大きな企業で経理をやりたいということであれば必須の資格です。
1級の話はこれから書いていきますが、少なくとも「必須」といえるのは2級までのレベルではないかと考えています。
また、将来管理職に就きたいと思っているのであれば、自分の部署の経理伝票の承認をする立場になるでしょうから、日商簿記検定2級くらいの知識は持っておいたほうがいいです。
レベルとしては商業高校卒業レベルとされています。
また、日商簿記検定3級までは科目が1つだけでしたが、日商簿記検定2級では”商業簿記”と“工業簿記”の2つの科目に分かれます。
難易度はもちろん、扱う範囲も3級と比較して広くなります。個人的な印象では、難易度・範囲ともに2倍程度になる印象です。
受験費用・受験時期・勉強時間の目安は以下の通りです。
- 受験費用:4,630円
- 受験時期:2月、6月、11月の年3回
- 勉強時間:100時間程度
日商簿記検定2級取得に係る費用(独学の場合)
参考書代:2,000円程度(商業簿記・工業簿記で一冊ずつ)
私の場合、2級もスッキリシリーズで合格しました。
なぜなら、独学だったのでできるだけ平易な解説のテキストがよかったというのと、3級と同じテキストを使用すれば効率が良いという理由からです。
実際、3級と同じシリーズを使ってよかったと思っています。
過去問題集:2,000円程度。
3級と同じ理由で、過去問題集も同じシリーズを使うのがおすすめです。
3級と同じく、2級についても一つの問題集を丁寧にやり抜いたうえで過去問題を解いていけば十分合格ラインに達します。
日商簿記検定2級取得に係る費用(資格予備校の場合)
大手予備校で80,000円程度。
日商簿記検定3級同様に、上記の費用の中にはINPUT(基礎講座)とOUTOUT(模試・過去問題)両方が含まれています。
正直言って、日商簿記検定3級までであれば予備校に通う必要はないと思うのですが、日商簿記検定2級となると、人によりけりです。
日商簿記検定2級において、独学か予備校に通うかを判断する基準としては、「 金と時間」だと考えています。
確かに難易度的には日商簿記検定2級>>>3級ですが、独学で無理かといわれるとそうではありません。
自分が独学でできたから、とかそういう話ではなく、日商簿記検定2級の概要を説明した通り、あくまで「高校卒業レベル」なので、 多少の個人差はあるにせよ、一般的な社会人であれば何とかならないレベルではないのです。
ただし、やはり独学だと理解に時間がかかるのは確かです。
周りに聞ける人がいない場合であればなおさらです。
そこをお金で解決するかどうかが、独学と資格予備校通学の分かれ道ではないかと思います。
私は日簿記検定2級をこう活かしました!
先ほどの話の続きです。
日商簿記検定3級を取得して、晴れて希望どおり経理部へ配属されることとなりました。
その頃の私は、日商簿記検定3級をもってるし、あとは実務で学んでいけばいいだろうと考えていました。
そう考えていたのもつかの間、配属されて初めての会議でその考え方は打ち砕かれることとなりました。打ち合わせで飛び交う言葉が全く理解不能だったのです。
まだ仕事に慣れていないという要素が大きいのはもちろんですが、そもそも簿記の基礎的な知識が圧倒的に足りないと感じさせられました。
そんな経緯で日商簿記検定2級の勉強を始めたのです。
自営業の個人商店ならまだしも、ある程度の規模以上で経理職をやるとなると、日商簿記検定2級は必須だと思います。
実際、勉強を進めていくにつれて、「これこの前勉強したところだ」なんて場面が多くなってきて、成長を感じることが出来ました。
なので、私の場合でいえば、完全に独学の机上のみで日商簿記検定2級に合格したというよりも、勉強⇒実践⇒勉強⇒実践のサイクルを繰り返しながら知識を身に付けていったと言えます。
日商簿記検定1級

日商簿記検定1級はどんな資格?
日商簿記検定1級は、一般企業の経理として働くために必須のスキルではありません。かといって、会計事務所や監査法人で働くには物足りないレベルです。
上記の理由を根拠にして、よくネットでは「日商簿記1級はとっても意味がない」「コスパ悪い」などどいう意見が数多くあります。
しかし、個人的には全くそのようには思いません。
日商簿記検定1級の内容は高度なものであり、レベルとしては大学で専門的に学ぶレベルです。
ですから 必須ではないにしろ、日商簿記検定1級を持っていればある程度の知識を持っている証明にはなります。
私は独学で勉強したため、取得のために予備校に通った人よりも多くの時間がかかってしまったと思います。
しかし、それを差し引いても、間違いなく取っておいて正解でした。その理由はこの章の最後で説明します。
受験費用・受験時期・勉強時間の目安は以下の通りです。
- 受験費用:7,710円
- 受験時期:6月、11月の年2回
- 勉強時間:800~1,000時間程度
日商簿記検定2級の時と比較して、一気に難易度が高くなるうえに、その範囲の広さも比べ物にならないくらい広いです。少なくとも5倍以上はあります。
さらに、年間の受験機会も2級・3級が3回であるのに対し、1級は年間に2回のみとなっています。
日商簿記検定1級取得に係る費用(独学の場合)
参考書代:16,000円程度(2,000×8冊)
資格予備校に通うことも悩んだのですが、結局下のテキストを使うことにしました。このシリーズは結構わかりやすく書かれているので、逆に「論点を網羅しきれているのか」という不安もありましたが、実際に使ってみた感想としては、問題ないです。
※冊数が多すぎてリンクを貼るとみにくくなってしまうので、一冊分だけリンクを貼っておきます。その他7冊分については、お手数ですがリンク先から探してみてください。
演習問題集:9,000円程度(2,000×6冊程度)
過去問題集:2,000円程度
※こちらも見やすさの観点からリンクは省略します。どのテキストを使うか迷った場合は個別にお問合せからご相談ください。
日商簿記検定2級・3級までであれば、問題集付きの参考書さえやりこんで、過去問を解いておけば十分です。
しかし、日商簿記検定1級では演習量も重要になってくるため、参考書についている問題集とは別に、演習問題集をこなしたほうがいいです。
「簿記1級は独学でも合格できるのか」という質問をよく受けるので、この疑問に対する回答については下の記事にまとめてあります。
日商簿記検定1級取得に係る費用(資格予備校の場合)
大手予備校で180,000円程度
日商簿記検定2級と同様に、上記の費用の中にはINPUT(基礎講座)とOUTPUT(模試・過去問題)の両方が含まれています。
資格予備校に通うには、日商簿記検定2級と比較してさらに100,000円程度価格が上がります。
日商簿記検定2級と同じく、日商簿記検定1級においても独学・通学の主な判断軸は「金と時間」だと考えています。
さらに付け加えるとすれば、日商簿記検定1級を独学で取得するには「資格取得の目的意識」が重要になります。
日常の業務と両立しつつ、ある程度長期的に勉強を続けていくには、「なんとなく取りたい」という想いだけではなかなか難しいのではないでしょうか。
私は日商簿記検定1級をこう活かしました!!
再び先ほどの続きです。
経理部に配属され、日商簿記検定2級を取得し、経理部における通常業務はだんだんと回せるようになってきました。
しかし、他の人間(職場の先輩・上司)がやっている業務内容は理解しておらず、もちろん会計的に専門的な知識を必要とする案件は担当させてもらえませんでした。
この時すでに、僕は今後のキャリアにおいて経理職としてスペシャリストを目指すと決心していたので、難しい領域の仕事にもどんどんチャレンジしていきたいと思っていました。
そんな経緯で始めたのが日商簿記検定1級の勉強です。
思うように時間が取れず、結局1年くらいかかってしまいましたが、最終的には無事合格することができました。
資格取得はもちろんうれしかったのですが、 勉強を進めていくにつれて、そこで学んだ知識をどんどん業務で生かしていけるのがとても勉強のモチベーション維持に繋がっていました。
日商簿記検定1級取得後は少々難しい案件(たとえば退職給付制度の移行に伴う会計処理の検討等)もだんだんと任せてもらえるようになり、仕事の幅を広げることが出来たと思っています。
日常の業務に加えて、転職の際にも日商簿記検定1級は役に立ちました。私が転職をした経緯はこの記事に書いているので、よかったら読んでいってください。

具体的にどのように役に立ったかというと、まず、 日商簿記検定1級を持っていれば、応募できる求人案件の幅が格段に広がります。
20代後半の経理マンが転職しようと思ったときに、まず大きなハードルとなるのが実務経験が募集要項で指定されているケースなのです。
しかし「日商簿記検定1級を持っていれば可」みたいな案件は往々にしてあります。
さらに、書類選考も落ちることはありませんでした。また、 面接の場でも日商簿記検定1級は直接評価していただく場面が多かったです。
簿記1級が転職に役立つかどうかという話は、以下の記事に詳しくまとめています。
簿記1級は転職に有利?実際に取得して転職してみた!【メリット】
私の場合は上記のように日商簿記検定1級を活かしてきましたが、もし今あなたが日商簿記検定1級を取りたいと思っている場合、その目的はいったい何でしょうか。
その問いに明確に答えられたら、独学でもやっていけると思います。
簿記は転職・スキルアップに役立つ資格!
皆さんの疑問はこの記事で解決できたでしょうか?
それぞれの資格のレベル感と、費用、活かし方のイメージが少しでも明確になったのであれば、とてもうれしいです。
記事を読んで疑問に思ったことがあれば、お問合せからどうぞ!
実際に経理職で転職を考えていて、何から始めようか迷っている方は下の記事がおすすめです。

以上です!ここまで読んでいただきありがとうございました!!
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